81 :殿堂 2018/05/20(日) 16:24:30 ID:8di
『精神科医の伯父』


伯父さんは地元の病院で精神科医・・・というより、
『薬とかの治療で治せない患者さんの話し相手になって、症状を精神的な面から改善させる』みたいな仕事をしてた。
カウンセラーって言葉を使えばわかりやすいかな。
親父とは二人っきりの兄弟ってこともあったんだろうけど仲が良くて、
よくうちに遊びに来ては、まだ小学校1、2年くらいだった俺と遊んでくれたり、
やっぱお医者様だから羽振り良かったのか、お小遣いくれたりして本当大好きな伯父さんだった。

で、その伯父さんに最後に会った時のこと。
今から4年前の冬休み。だからちょうど時期的には今頃だな。
その年の4月から地元を出て札幌の高校に行っていた俺は、
母さんから「××さん(伯父さん)も来るから、お正月くらい帰ってきなよ」って言われてて、
どーせ大掃除手伝わされるんだろマンドクセとか思いながらも、
母さんの栗きんとんと伯父(およびお年玉)目当てに、久しぶりに帰省してきた。

伯父さんはいつものように客間に泊まってたんだけど、挨拶しに行ってまずびっくりした。
俺の記憶の中の伯父さんは、やせ気味の貧乏神ライクな親父と対照的に、
100キロくらいありそうな縦も横もでっかい人だったんだが、それが親父以上にガリガリになってた。
髪もぼっさぼさで、ものごっつアウトローな感じに。
まあ、その時は「どーしたの伯父さん。めっちゃかっこよくなってんじゃん」とか言って笑ってたけど。

その夜、飯食ったあとに、なんか解らんけど親父が風呂行って、母さんが台所に引っ込んでーって、
居間で俺と伯父さんだけになった。
最初は昔話とか『おまえ札幌でちゃんとやってるか』的なこと聞かれたりとか、ふつーに話してたんだけど、
ふと伯父さん真顔になって、「今、子供の声聞こえたか?」って。
伯父さんは酒ダメだったし、別にふざけてるとか俺を脅かそうってわけでもないっぽい雰囲気だったので、
ちょっと怖くなりながらも(当然ながら我が家で最年少は俺)「聞こえんかったよ」って言うと、
「そうか、やっぱりな・・・」って哀しそうな顔でこんな風に言うんだよ。

「伯父さんさ、最近聞こえるんだよ。どこにいても、子供の声がいろいろ命令して来るんだよ」